20TH ANNIVERSARY

JOURNEY

20年の軌跡

TITLE

東海地方の集客シーンに変革をもたらした
商業施設としてのセントレア

PROFILE

田中 三文

旅人総研 代表

1962年生。明治大学卒。観光関係の出版社を経て、民間シンクタンクで主に観光振興業務を行う。中日新聞発行の「東海エリアデータブック」をセントレア開港前から20年間執筆し、東海地方のプロジェク動向に詳しい。現在は、(一社)ほの国東三河観光ビューローのマーケティングディレクターを務めるとともに、旅人総研を立ち上げ、執筆活動等を行う。愛知大学、名古屋国際専門職大学非常勤講師。中日新聞WEBで旅ブログ「東海さすらい旅日記」連載中。

CHAPTER.01東海エリアの集客シーンに与えたインパクト

セントレアの開港初年度である2005年度の集客数をまとめた「東海3県主要集客施設・集客実態調査」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱)というレポートがある。筆者が同社に在籍時代に実施したものであるが、そのレポートにおいて中部国際空港セントレアは集客数ランキングで初登場第1位を獲得した。その調査の目的は、東海地方の観光や集客施設を旧来から知られる観光地だけではなく、実際に人が集まり、賑わいを作り出しているところを抽出し、集客施設という概念を幅広くとらえ、東海地方の観光関係者に刺激を与えたいという想いがあった。そこにセントレアが開港した。単なる空港機能だけではなく、当初から、商業空港として非航空収入に注力するという方針が示されていたことから、調査の対象とすることに躊躇はなかった。ふたを開けてみれば、開港年である2005年度(4~3月)には1,209万人が航空利用以外で訪れる結果となった。

それまで同調査でトップを維持してきた長島温泉が384万人、次いでの集客数のナゴヤドームが369万人であったことを見れば、桁違いの集客数をもって、堂々の集客施設の仲間入りをした。そして、セントレアは強いインパクトをもって業界にその存在を知らしめることになった。その後、長島温泉が、アウトレットモールのジャズドリーム長島の集客も含めた複合施設「ナガシマリゾート」としての集客数をカウントするようになり、トップの座は譲ったものの、常に上位3位に入るまさに東海地方を代表する集客施設としてその座をゆるぎないものとしている。

また、愛知県の観光統計においても、2005年の開港年には対象となっていなかったものが1年遅れで翌年2006年からは対象となり、「中部国際空港見学者」という括りではあるが、愛知県トップの観光資源として県に公式に認められた。これは、寺社や遊園地や動物園、公園や祭りなどこれまでの観光資源の既定概念を打ち破る意義深いことであった。

CHAPTER.03商業施設・集客施設としての魅力の充実

セントレアの商業施設はこの20年の間にテナントの移り変わりはあったものの、単なる航空利用者のサービス施設ではなく、それ自体が単独で目的地として来てもらえるような独自の魅力を持った商業施設として存在し続けている。開港当初から東海地方初出展やオリジナリティの高い店舗の登場などの話題づくりが意識されていたほか、空間づくりにおいても和風の「ちょうちん横丁」や洋風の「レンガ通り」など、テーマ型商業施設としての魅力を創り出した。イベント広場では週末を中心にさまざまな催しやイベント型店舗が展開され、常に新鮮な商業ゾーンとして展開されてきたことも集客数を維持してきた力であることは間違いない。

また、セントレアの最大の特徴としては、飲食、物販、イベントだけではなく、その他の強いアイテムが存在することである。国内の空港では一番飛行機を間近で感じられる展望台「スカイデッキ」、世界でも例を表見ない飛行機が望める本格的温浴施設「SOLA SPA 風の湯」は開港当初から備わった複合集客機能である。

そこに、2018年10月に新たな集客施設として空のテーマパーク「フライト・オブ・ドリームス」が加わった。航空機の実機展示や遊具などがあるゾーン「フライトパーク」と飲食物販ゾーン「シアトルテラス」で構成され、ここ自体が単体でも集客できる本格的なアミューズメント施設として、また複合商業施設として新たな魅力を持って登場した。

それ以外にも空港見学ガイドツアーなどソフト面でも力が入れられており、まさに、非航空利用者も目的地として訪れたくなる商業施設として充実が図られてきた。
これらの魅力を基に、現在は「かぞくのアソビバ セントレア」というキャッチフレーズのもとキャンペーンが行われており、改めて家族でさまざまな魅力が楽しめるセントレアとしてPRを展開している。

CHAPTER.02空港島と中部臨空都市への影響と発展

2005年にはセントレアだけだったこのエリアもこの20年でさまざまな開発が進んだ。空港島内には5つのホテルが進出。2019年6月には、国内初の空港直結型の大規模展示場「Aichi Sky Expo」が開業し、空港島内の一層の賑わいが増すことになった。ホテル宿泊者の商業施設利用はもちろん、Aichi Sky Expoへの来場者も、それぞれの展示会やイベント、ライブなどさまざまな目的客が空港島にやってくるものの、それらの利用客たちは、空港駅直結の商業施設であるセントレア商業ゾーンへの立ち寄り客も増えることになり、相乗効果を生み出している。

また、空港島対岸部の中部臨空都市に目を向けると、2012年12月に「めんたいパークとこなめ」が開業したのを端緒に、2015年12月には、店舗面積87,000㎡の大型ショッピングモール「イオンモール常滑」が開業、続いて2017年8月には「コストコホールセール中部空港倉庫店」が開業した。これらのタイプの違う商業施設の集積により、中部臨空都市の魅力が高まった。これは、セントレアに航空利用以外の人が1,000万人前後も集まっている実績があることで、セントレアを含めた一大商業ゾーンを形成することができたと言えよう。もしセントレアが単なる空港機能だけだったら、ここまで商業施設の集積は起こらなかったかも知れない。起爆剤となったのは商業施設としてのセントレアの存在であることは間違いない。

CHAPTER.03商業施設・集客施設としてのセントレアが地域に与えた影響

セントレア開港の2005年、愛知県を含む東海地方は観光振興への関心はまだ低く、観光不毛の地とでもいわんばかりの状況であった。全国有数のものづくり地域として発展してきた経緯もあり、観光は二の次といった感があった。しかし、愛知万博の開催、セントレアの開港によって、ようやく国内外からの観光客を呼び込もうという機運が高まり、さまざまな施策が国や行政で動き始めた。そこに、これまでの観光資源の概念のなかったタイプのセントレアが集客数1位として登場したことは、まさに東海地方の観光への意識を変え、目覚めさせる大きなきっかけとなった。直近の愛知県の観光統計の上位に、刈谷ハイウェイオアシスやNEOPASA岡崎などがランキングされていることからもそれは裏付けられる。

そして、セントレア及びセントレア周辺の商業開発が進み、観光地としての知多半島のイメージや知名度が高まっていった。それにより、足元常滑市のやきもの散歩道や隣接する半田市の蔵の町など既存の魅力が徐々に伝わり、観光地として認識が高まったほか、知多半島全体への観光客の周遊率が高めることに繋がったと言えよう。来訪者のマーケットエリアも地元知多半島の地域住民から名古屋周辺などまで広域にエリア拡大したことは間違いない。

20年前の観光振興不毛の地の状態であった時期を振り返れば、この20年で東海地方の観光振興の状況は変わった。レゴランド・ジャパンやジブリパークなど国内外から集客できる施設の誕生もあったが、愛知県随一の集客数を誇るセントレアが新時代の「東海地方の集客文化」を創り出し、けん引してきたと言っても過言ではない。セントレアを取り巻くさまざまな施設の集積により、もの・ひと・ことの交流が生まれた。これからも航空利用だけではない目的地「こころときめくエアシティ」としてのセントレアのさらなる進化に期待される。

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