概要
中部国際空港は、基本設計の段階から学識経験者・有識者、障害等当事者、設計者、施工者、メーカー、行政機関等が主体となって議論・検証を重ね、旅客ターミナルビルの UD を追求しました。UD という概念が現在ほど浸透していなかった当時から、誰もが使いやすい空港の実現に取り組んだ点は「お客様第一」を掲げる中部国際空港の理念を反映したものといえます。
経緯・背景
UD 実現までの道のり(年表)
| 時期 | できごと | 詳細 |
|---|---|---|
| 1999年6月 | 旅客ターミナルビルの基本計画完成 | 建設コンセプトが ①はじめての人にもわかりやすい ②ユニバーサルデザインによる誰もが使いやすい ③コンパクトで効率的な構成 ④環境との調和 ⑤需要増加に柔軟に対応できる拡張性の高さ ⑥集客力と経済性 と定められました |
| 1999年7月 | UD配慮・当事者参画の要望 | バリアフリーコンサルティングをおこなっていた「社会福祉法人AJU自立の家」より当社に対し、障害等当事者をはじめとする多様なユーザーによる設計への参画を要望する文書が提出されました |
| 2000年3月 | UD研究会の設置決定 | 社会福祉法人AJU自立の家と当社の面談により、ユーザー等が参画する研究組織「UD研究会」を立ち上げ、この組織から設計に対して提言を行うことが決定されました |
| 2000年6月 | UD研究会活動開始 | 基本設計・実施設計・施工の各段階で会合・現地検証・提案取りまとめ等を実施しました |
| 2005年2月 | 開港 | 開港をもってUD研究会は解散しました |
UD研究会
体制
UD研究会では、以下のメンバーを中心に延べ142回もの会議・検証会が行われ、使い手・作り手双方の知見を活かした設計・施工が数多く実現されました。
| 学識経験者・有識者 | 6名 |
|---|---|
| 障害等当事者団体 | 19団体 |
| オブザーバー | 7事業者 |
UD 研究会のコアメンバー
※この他に、テーマや検証内容に応じて各メーカーの担当者・技術者も参加しました
基本的な考え方
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- 誰もが使いやすいハード面を整備し、ハードで対応できない部分を人による対応で補うという原則で施設設計が進められました
- ハード面を整備するうえでは、多様な属性の公約数となる手段を採用しつつ、それとは対立するニーズに対しては第2・第3の選択肢を確保する「オルタナティブ・デザイン」の考え方が採り入れられました
- 重要な施設・設備の設計過程では、手戻りが無いよう、試作品などを用いた検証が重ねられました
UD研究会:プレスリリース(2000/06/01)(PDF)
主な成果、特筆事項
動線設計
- 空港内の移動を簡素かつ容易なものとするために「アクセスプラザ」が設けられました
- アクセスプラザは徒歩移動の結節点であり、第1ターミナル、各種交通機関、サービス施設と直結しています
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段差の無い動線
- 空港に到着してから第1ターミナルで航空機に搭乗するまで、段差がない経路設計となっています(バス搭乗時をのぞく)
- 高低差のある動線は全てスロープで緩やかに繋がれている他、エレベーターや動く歩道といった選択肢も整備されています
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色彩
- 床面には、進行方向や通路エリアを暗示する色彩が施されており、直観的な動線把握が可能です
- 錯視を排除し、床面・壁面・天井の明度差をつけることで直観的な空間把握を容易にしました
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照明
- 照明の種類や設置方法が通路空間と滞留空間で使い分けられており、直観的な動線把握・空間把握が可能です
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エレベーター
- 階層移動が必要となる全ての箇所で、スロープないし階段とセットでエレベーターを設置しています。多くのエレベーターで、乗り降りの際に方向転換をしなくても良いウォークスルー型が採用されています
- 手荷物カートや車いすをお使いの方でも快適に移動できるよう、広さにゆとりのある「かご」を採用しています
- ボタンの位置や案内表示、音声案内など細部に至るまで当事者による検証を重ねました
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動く歩道
- 移動距離が長くなりがちな空港において、全てのお客様の歩行負荷を軽減するべく主要な動線上に動く歩道を設置しています
- 視覚障害のある方や歩行に不安のある方のために、可動部の始点の手前と終点の先に音声案内装置と手すりを備えたスペースを設けています
- 弱視の方を含め、利用者が可動部の動きをひと目で把握できるよう可動部にはカラーリングが施されています
- 動く歩道の傾斜角や速度、幅員なども当事者による検証を経て決定されました
- 保安検査通過後の動く歩道では、床面と可動部の段差をなくした独自機構のものを開発・導入しました(フラットコム)
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トイレ
- お客様の安心・快適な空港利用を実現するために、数・設備ともにトイレを充実したものにしました
- 約90m間隔でトイレを設置し、トイレへのアクセス性を高めました
- 一般のトイレは、スーツケースはもちろんのこと、小型の車いす・折り畳み式ベビーカーでも入室できるサイズとしました
- 一般のトイレの利用が難しい方(異性介助者同伴、電動車いす、ストレッチャー等)のために一般的なものよりも大きなバリアフリートイレを整備しました
- 一般トイレ・バリアフリートイレともに、可能な限り左右対称のものを複数設置することで選択性を高めています
- 個室内には緊急時に明滅するフラッシュライトを設置し、安全性を高めました
- トイレのブース寸法、設備配置等も当事者による検証を経て決定されました
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ご案内
グッドデザイン賞
使いやすい施設の実現、空港施設の効率的な運用と拡張性、環境との調和等が評価され、2005年に公益財団法人日本デザイン振興会が主催するグッドデザイン賞を受賞しました。
バリアフリー化推進功労者表彰
このような当事者参画を通したターミナル設計のプロセス・成果が評価され、2007年に国のバリアフリー化推進功労者表彰の内閣総理大臣表彰を受賞しました。
バリアフリー化推進功労者表彰:プレスリリース(2007/12/5)(PDF)
書籍
UD研究会の取り組みは一般書籍化されております。
「中部国際空港のユニバーサルデザイン」プロセスからデザインの検証まで」
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発行:2007年7月30日
編集者:谷口 元、磯部 友彦、森崎 康宣、原 利明
発行所:鹿島出版会(東京都中央区八重洲2-5-14)
ISBN978-4-306-07259-6 C3052
